『天空』に見る、あの頃と異なる“パーフェクトスター”/Perfume 7th Tour 2018「FUTURE POP」個人的ガイドライン
2018年大晦日のカウントダウンライブを終え、一旦、国内公演のフィナーレを迎えた“Perfume 7th Tour 2018「FUTURE POP」”(中止順延になった大阪公演2日目のことは、ひとまず置いておく)。
今回は、今ツアーのセットリスト&演出を中心に、個人的な忘備録を兼ねたひと記事にします。Twitterで140字を連ねてたところで、きっとまとまらないと思ったので。
※ここで書くのは、マリンメッセ福岡までの【本公演】について。
▼Set List
Opening
M01.Start-Up
M02.Future Pop
M03.エレクトロ・ワールド
M04.If you wanna
M05.超来輪
M06.FUSION
M07.Tiny Baby
M08.Let Me Know
MC
M09.宝石の雨
M10.Butterfly
M11.スパイス
M12.TOKYO GIRL
M13.575
M14.Everyday
P.T.A.のコーナー
M15.FAKE IT
M16.FLASH
M17.Party Maker
M18.天空
MC
M19.無限未来
* * *
■第一幕【Opening~Let Me Know】
「Reframe」の延長線上にある「FUTURE」
今ツアーのオープニングは、Rhizomatiks×Perfumeを前面に押し出し始めた2013年以降、幾度とPerfumeのライブ演出を手がけてきたevala氏。
2015年3月の「SXSW 2015」直前にリリースした“Perfume Translyrics Project”の素材を用いて、Perfumeが歩んできた道を、初の冠ライブである「BEE-HIVE New Year Live '04~Perfume day~」(2004年1月3日、SHIBUYA BOXX)から振り返る。
evala氏の電子音楽は、2004年以降の道を大きく3つに分けた。
インディーズ期から初の東京ドームまで、国内のみを上り詰めた【2004~2010年】、
『ポリリズム』が映画『カーズ2』挿入歌に抜擢され、Perfumeの3人が“海外”を意識し始めた【2011年】。
そして、IOCコードで“日本”を指す「JPN」の3文字を背負い、初の海外ツアーに臨んだ2012年から、国内でも“代表”として本命視されるようになった昨今までの【2012~2018年】をまとめる。
オープニング終盤。サンプリングされた41カ国の“挨拶”が合わさり、3人はある単語を、鮮明に言い放つ。
“FUTURE”
ただ、この“未来”を語るためには、“現在”、そして“過去”を語ることも必要だ。
『Start-Up』を経て、3人がゆっくりと“Future Pop City”に降り立つ『Future Pop』。この冒頭で聞こえる“PAST(過去)”、“PRESENT(現在)”、“FUTURE(未来)”の3(6)単語。先の『Butterfly』でもわかりやすく示されるとおり、この「過去・現在・未来」が今ツアーのわかりやすい主題ということを感じさせる。
さて、ステージに3人が現れ、ノンストップで全8曲を踊り続ける第一幕。どの公演でも3人が必ず語っていたように、この部分は2018年3月に行なわれた「Reframe」を模して“MCナシ”で魅せた。
自分が知るかぎり、3人が今までに行なった連続パフォーマンスは、「P.T.A.サミット」(2015年、O-WEST)冒頭の6曲が最多。
“Reframeという挑戦によって、自分たちの新たな魅せ方を掴んだ”(意訳)
という言葉のとおり、3人は静かに“未来への可能性”を提示する。
また、ここで、「Reframe」当日にかしゆかが語った言葉を一度振り返っておく。
“3人で積み重ねてきたものや、スタッフさんと一緒に作り上げてきたもの、それを見てくれていたファンの人たちの想い。ずっと何年も積み重なってきた想いが再構築されて、また新しく、素敵なものに”
“思い出も振り返りつつ、「新しい」と感じながら「懐かしい」と思える、心の温まるものができる”
上半期の「Reframe」を受け、のっちが誇張ナシに“世界一”と語るアルバム『Future Pop』を手にした上で、チームPerfumeはあらためて、「アミッドスクリーン」「ディープラーニング」などの最新技術を含めたパフォーマンスを魅せる。
今ツアーでPerfumeが見せたいもの――それは「未来&(現在&)過去」≠「テクノロジー&生身」の“共存”だ。
そういう意味でも、今ツアーは「Reframe」の延長線上にあるものだった。
■第二幕【(宝石の雨)Butterfly~Everyday】
二段構成の時間旅行が示すもの
MCを挟んで続く第二幕。
再構築を経た『Butterfly』をタイムマシンとして、Perfumeは過去――オープニングでターニングポイントとして示した【2011年】へと遡る。
今ツアーの開幕日である9月21日から翌週あたりまで、この第二幕冒頭を「会場によって曲を入れ替える位置」と予想した人も多いだろう。
しかし、ここでPerfumeが遡る日時は決まって2011年11月2日――『スパイス』のリリース日だった。
いったい、なぜこのタイミングで『スパイス』なのか。
“知らないほうがいいのかもね でも思いがけないワクワクがほしい”
“扉を開けば 全てが見えるわ”
それは、この曲が「“日本”を背負い、“世界”へ踏み出すタイミング」に、「好奇心と勇気を持って、一歩を踏み出せ」というメッセージを込めて作られているからだ。それ故に、ほかの曲へと入れ替えることができなかったのではないだろうか。
さて、【2011年】当時まで逆行した3人は、その後、再び時を重ね、2017年の『TOKYO GIRL』へと進む。
「Perfumeタワー」の頂上へ進むようにせり上がるステージや、終盤で3人のもとへ集中する数多のスポットライト。観客は、光に照らされる3人を見上げることになる。
つまり「今ツアーの観客」は「MV作中で憂いのある表情を浮かべていた群衆」≒「今ツアーの観客」であり、また、PerfumeもMV同様に、ここで“「東京≠現代」に感じる閉塞感”を吹き飛ばす存在として、“未来への光”をまとう。
東京を代表し、世界へ向けて
「日本は、本当はすごいんだぞ」(2018年「Reframe」あ~ちゃん)
という意志を表明する。
――さらに時間旅行は続く。
続く『575』では再び過去へ戻り、今度は「1234567891011」(2010年、東京ドーム)で詠んだ「五・七・五」を再構築する。
“夢見てた 小さな胸に 光あれ”
“これからも 君との未来を つなげたい”
“この先も ずっととなりで みてくれる?”
(正しくは「この景色 ずっと〜〜」説が有力)
という三句を用いた直球手段で、“ファンとの未来”を提示。
そして“今=現代”や“これから=未来”への喜びを歌う、2017年の『Everyday』へと戻る。
この第二幕……二段構成の時間旅行を通して、Perfumeは「ファンとともに進む、挑戦し続ける未来」を示した。
これを踏まえた上で、徳島公演以後、第二幕の冒頭に追加された『宝石の雨』の一節を振り返る。
“まだ笑っていたいでしょ?”
■第三幕【FAKE IT~無限未来】
『天空』に見る、異なる"パーフェクトスター"
彼女たちが10年以上言い続ける「Perfumeの本域はライブ」(意訳)という言葉のもと、第三幕は進化し続ける「P.T.A.のコーナー」を経て、いわゆる“アゲ曲”の『FAKE IT』『FLASH』『Party Maker』へと続いていく。
少し脱線するが、このパートから『チョコレイト・ディスコ』『ポリリズム』という、安定した爆発力を持つ2曲を外したことも、2018年のPerfumeを語る上で欠かせないひとつの要素だろう(もともと『ポリリズム』は大抵のセットリストから外れかけていたとはいえ/だからこそ、カウントダウンライブで魅せたこの2曲は熱かった)。
さて、個人的にこの幕……いや、今ツアーで最も大きな文脈を持っていたと思えるのが、第三幕終盤に構える『天空』だ。
続く『無限未来』をエピローグ的に捉えるならば、この『天空』が“今回のセットリストにおける主題を担っている”といっていい。
“天空の街へ 行こう 時を紡ぐ そっと目を開いて キミの元まで”
この曲の冒頭で、Perfumeは空から、今ツアーの各会場へと降り立つ。オープニングで見せていた世界地図、蓄積してきた数々のライブを“更新”するのだ。
では、そのオープニングで各地に降り立ったPerfumeは、最後に何を伝えようとしたのか? この答えも『天空』の歌詞の中に存在する。
“完全なんて無いって 分からずにいた頃に”
この一節は、『パーフェクトスター・パーフェクトスタイル』を収録した『Complete Best』のリリース当時を指す。
SPEEDに憧れてこの道を走り始め、紆余曲折を経て自分たちの音楽やダンスを信じるも、なかなか芽を出すことができなかったPerfume。
解散すら示唆されるなか、彼女たちや周囲の大人たちが“完全”としていたのが、当時の第一線で活躍していたほかのアイドルたちだ。
この『パーフェクトスター・パーフェクトスタイル』との繋がりを決定づけるのが、
・コンベスをリリースした当時、周りから何度も「解散するの?」と聞かれていた
・もっさんは『パーフェクトスター・パーフェクトスタイル』をシングルカットするべく奔走してくれていた。ただ、その願いは叶わなかった
・もっさんは今になっても、当時のことを申し訳なさそうに話す
(要約)
という、ツアー終盤・横浜公演初日であ~ちゃんが『天空』後に語ったMC。
Perfumeは今、あの頃の“完全”とはまったく異なる形を作り上げている。
20年近くもメンバーを固定し、テクノロジーと融合し、かつフィジカルベースで高パフォーマンスを続ける。
あの頃の“完全”ではない、別の“完全”を今もなお形成し続けているのだ。
さらに、ここであらためて、今ツアーの冒頭・第一幕の2曲を振り返らせてほしい。
“あの頃と意味は違うけど そう ボクらは生き続けてきた”(『Future Pop』)
“この道を走り進み進み進み続けた”(『エレクトロ・ワールド』)
「あの頃」とは「完全なんて無いって 分からずにいた頃」であり、
「この道」とは「当時、“完全”の背中を追って歩んでいた路線」だ。
その後、『エレクトロ・ワールド』の歌詞はこう続く。
“地図に書いてあるはずの町が見当たらない”
“振り返るとそこに見えていた景色が消えた”
“この世界 僕が最後で最後最後だ”
つまり、終末論的に捉えられていたこの曲にすら、今となっては「誰よりも長く、自らの道を進むこと」「誰も追いつく(真似する)ことができない、唯一無二の存在になったこと」の意味合いが生まれている。
やや早合点ではあるが、彼女たちが『天空』≒今ツアーで示したもの。
それは「Reframe」と繋がる“過去の更新”であり、“別の完全を迎える未来への展望”だった。
大晦日までを通して観て、こう考えざるを得ない。
* * *
エピローグ『無限未来』を終えたPerfumeは『Start-Up』と光の下、また別のライブ会場へ向かうべく姿を消す。
“まだまだの可能性と、まだまだある向上心。この気持ちを持って、30歳のこれからを突っ走っていきます“
“『これからきっと明るくなる』。そう信じてもらえる未来を作りたい”
(2019年1月1日の終演直前、あ~ちゃん)
30代の彼女たちを、彼女たちが見せてくれるその未来を、私は信じたい。